「これはコーヒーのおともに良い」と思ったものを書くブログは、パンデミックをきっかけに始めた。
毎日飲むコーヒーと一緒に何を食べようかと考えることが、日々の慰めになっていたから。
外出を自粛しなければならず、出かけるとすれば日用品の買い物くらい。近隣のスーパーや100円ショップ、コンビニで手に入るもので工夫して、コーヒータイムを充実させるのは、良い気晴らしだった。いつかまた旅行だってできるさ、と海外のレシピを眺めて、自宅にいながら異国のおいしいものに想像を巡らせるのも楽しかった。
世界が変化して、自分のものの感じ方も変化して、家で仕事をするようになって、依然、外出の機会は増えないままだ。コーヒーのおともを考えることは、一時の退屈しのぎから生活に根付いた習慣となった。
ふだん食べるものは、ご馳走でない方がいい。刺激が強いものはそんなに欲しくならない。だから、厳選素材でなくても、プロの手による洗練されたものでなくても、今日のコーヒーの満足には十分なんだ。
たまのご馳走が際立って素晴らしいものになる、という利点もある。得られる感動にメリハリがついて、良いバランスが保たれるんじゃなかろうか。
イタリアのエミリア=ロマーニャ州・リミニにある HOTEL STELLA DEL MARE の Laura さんが紹介するじゃがいものガトー[*1]を見て、コーヒーのおともに良さそうだなと思った。
材料がシンプルだから、素材にこだわった方が絶対いいんだけれども、ここは、スーパーで手に入るものでつくっちゃう。
燻製生ハム・スペックは、スーパーのPBの生ハムで代替。じゃがいもはメークイン、パルミジャーノはパルメザン粉チーズを使う。パン粉も安価なドライパン粉をめん棒でつぶしてイタリア風に粉々にする。お皿はセリアで買ったもの。
出来上がったのは、Lauraさんがつくるものとは全然違っていたとしても、食べて笑顔になれる程度、じゅうぶんおいしかった。ちょうどいいおいしさ。
なんでもない日の、いつものコーヒーのおともに、gateau di patate(じゃがいものガトー)。明日も明後日もその次の日も、ずっと続く日常に無理のない楽しみを。日日のコーヒーのおともは、かくあれかし、だ。
材料と作り方はこんな感じ
gateau di patate 材料と作り方
※ 21cm x 14cmのバット1個分
下準備① ドライパン粉(大さじ2)はジッパー袋に入れ、めん棒で押して細かい粉末にしておく
下準備② 生ハムは細かく刻んでおく
- じゃがいもは水から茹でる。串を刺して火が通っていることを確認し、茹で上がったら鍋から出し、水気を切る
- メークイン 440g(3個)
- 茹で上がった①が温かいうちに皮をむきながらボウルに入れマッシャーでつぶす。半量をつぶしたところでバターを加え、上からもう半量のじゃがいもを加えてつぶす。
※ 上下のじゃがいもの熱でバターを溶かす - バター 大さじ3
- ②を好みの粗さまでつぶしたら、残りの材料を加えてゴムベラで混ぜる
※ オーブンを180℃で予熱開始する - 卵 1個
- パルメザンチーズ 16g
- 生ハム(刻んだもの) 16g
- 塩 小さじ1/4 (好みで加減)
- バットの内側にバター(分量外)を塗り、パン粉の一部を内側にはたく。③の生地をバットに入れて表面をならし、パン粉をザルでふるいながら上からかける
- パン粉(粉末) 大さじ2
- 予熱したオーブンの温度を170℃にし、④を30分焼く
※ 表面のパン粉に好みの焼き色がつくまで
- 焼き上がったら、バットに入れたまま15分ほどおいておき、粗熱が取れたら切り分ける